終電を逃したときや、雨が降っているとき、重い荷物を持っているときなど、私たちの移動を助けてくれるタクシー。
電車やバスとは違い、乗り換えの必要もなく、目的地まで直接連れて行ってくれる便利な移動手段です。
しかし、いざ目的地に到着して料金を見ると、
「こんなにするの?」
「やっぱりタクシーは高いな……」
と感じたことはないでしょうか。
実際、「タクシーは高い」というイメージから、乗りたいと思っても利用をためらってしまう方もいるでしょうし、実際料金が高いと文句をいうお客様もいました。では、なぜタクシーは電車やバスと比べて、これほど高く感じるのでしょうか。
その理由として人件費や車両の維持費、国が定める運賃制度などがあげられます。
しかし、私は実際にタクシー運転手として働いてみて、「タクシーというサービスそのものが、電車やバスとは大きく違う」ことも、高くなる理由の一つだと感じました。
この記事では、一般的にいわれているタクシー料金が高い理由だけでなく、元タクシー運転手の経験をもとに、「なぜタクシーは高いのか」をできるだけ分かりやすく解説します。
タクシーの運賃は高い?
実際のところ、タクシーの運賃は高いです。
筆者が住んでいる大阪府のある地域では以下のような料金を採用している会社が多いです。(会社によって料金は異なります)
- 初乗運賃1.2km600円
- 231mごと100円
- 1分25秒ごと100円(停止時及び時速10㎞以下の時)
これだけではわかりにくいのでなんば駅から大阪駅(梅田)まで行くことを考えましょう。
| 移動手段 | 時間 | 運賃 | 距離 |
| タクシー | 約15分 | 約2400円 | 約4km |
| 地下鉄 | 約15分 | 240円 | 約4km |
| バス | 約25分 | 210円 | 約4km |
この表からわかるように、地下鉄なら240円、バスなら210円程度で移動できるのに対し、タクシーでは約2,400円かかります。
同じ約4kmの移動でも、公共交通機関とタクシーでは約10倍もの料金差があります。
こうして比較すると、「タクシーは高い」と感じるのも無理はないでしょう。
では、なぜ同じ距離を移動するだけなのに、これほど料金に差があるのでしょうか。
タクシーの運賃はなぜ高く感じるのか
タクシーの運賃が高く感じる大きな理由のひとつは、バスや電車と同じ「移動手段」として料金を比べてしまうからです。
同じ4kmを移動するサービスでも、その仕組みはまったく異なります。
たとえば、運賃210円のバスに30人が乗っていたとしましょう。
単純計算すると、乗客30人が支払う運賃は合計6,300円です。
一人ひとりが支払うのは210円ですが、同じバスと運転手を30人で利用しています。イメージとしては、1台のバスによる移動サービスを大勢で利用しているわけです。
電車なら、さらに多くの乗客が同じ車両を利用します。
一方、タクシーは基本的に1台を一人、もしくは一組の乗客だけで利用します。
乗客が一人しかいなくても、その人のために1台の車両と1人の運転手が目的地まで走ります。
これはわかりやすく言うとタクシーは「運転手付きの車を一組で貸し切って移動するサービス」ともいえます。
先ほど紹介した、なんば駅から大阪駅(梅田)までの約4kmの移動も同じです。
「約4km移動するために約2,400円」と考えると高く感じます。
しかし、「好きな場所から目的地まで、運転手付きの車を1台貸し切って約2,400円」と考えると、少し料金の見え方が変わるのではないでしょうか。
つまり、バスや電車とタクシーでは、同じ距離を移動していても、そもそも利用しているサービスの内容が違うのです。
もちろん、タクシーが高い理由は「1台を貸し切るから」というだけではありません。
人件費や車両の維持費、乗客を乗せていない時間など、タクシーならではの事情もあります。
ここからは、タクシーの運賃が高くなる具体的な理由について見ていきましょう。
タクシーの運賃が高い理由は?
タクシーの運賃が高いのは、「貸し切りサービスだから」というだけではありません。
人件費や車両の維持費、そして乗客を乗せていない時間まで含めて料金が成り立っています。
ここでは、元タクシー運転手の経験も交えながら、特に知ってほしい3つの理由を紹介します。
理由1:人件費の割合が非常に大きい
タクシー会社の運営費の中でも、大きな割合を占めるのが人件費です。
タクシーは1台につき運転手が1人必要です。バスや電車のように、多くの乗客で1人の運転手を支える仕組みではありません。
さらに運転手は、運転するだけが仕事ではありません。
- 安全運転
- 接客
- 荷物の積み下ろし
- 高齢者や体の不自由な方の乗降補助
- 忘れ物やトラブルへの対応
こうしたサービスも料金に含まれています。
私が乗務していたときも、「目的地まで運ぶ」以外の対応をする場面は毎日のようにありました。
理由2:乗客を乗せていない時間にもコストがかかる
タクシーは、お客様を乗せている時間だけ走っているわけではありません。
実際には、
- お客様を探して空車で走る時間
- 配車場所まで迎えに行く時間
- 駅や繁華街で待機する時間
など、売上が発生しない時間もたくさんあります。
例えば、15分乗車していただいたお客様でも、その前に20分空車で走っていたら、運転手と車両は合計35分動いています。
お客様から見ると「15分で2,400円」ですが、タクシー会社から見ると「35分かけて1件の仕事」になることも珍しくありません。
この空車時間も含めて営業する必要があることが、タクシー料金が高くなる大きな理由の一つです。
理由3:車を維持するだけでも多くの費用がかかる
タクシーは毎日長い距離を走るため、一般の自家用車よりも維持費が多くかかります。
主な費用には次のようなものがあります。
- ガソリン・LPガスなどの燃料代
- タイヤやブレーキなどの消耗品
- 車検・点検・修理費用
- 任意保険・自賠責保険
- ドライブレコーダーや決済端末などの機器
これらは、お客様が乗っていない日でも発生する費用です。
そのため、運賃には「移動した距離」だけでなく、「車両を安全に営業できる状態で維持するための費用」も含まれています。
実際にドライバーが支払うのではありませんが、会社としても利益を得ることが大事なので、車にかかる費用が含まれています。
まとめ
今回はタクシーの運賃が高いと言われる理由についてまとめてみました。
タクシーは確かにバスや電車より高い移動手段です。
しかし、高い理由は『ぼったくりだから』ではなく、一組で車と運転手を貸し切るサービスであり、人件費や空車時間、車両維持費などを含めて料金が決まっているからです。


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