タクシーにチャイルドシートは必要?赤ちゃんを抱っこで乗せてもいい?なしは違反?

タクシーの仕事・勤務形態

はじめに|「タクシーに赤ちゃん抱っこ」はアリかナシか?

ある雨の日の夕方、駅前のロータリーでタクシーを待つ若い夫婦。腕の中にはまだ首のすわっていない赤ちゃん。
「チャイルドシートないけど…抱っこで乗ってもいいのかな?」
そんな言葉を何度も耳にしてきました。

子育て世代にとって、ほんの10分の移動も命がけの判断になる。
特に公共交通機関が使いづらい場所では、タクシーは貴重な足。でも「安全」は?「違反にはならないの?」
この記事では、元タクシー運転手である筆者が、法律・現場のリアル・そして親としての目線から、「タクシーに赤ちゃんをチャイルドシートなしで乗せる問題」について徹底解説します。

赤ちゃんを抱っこしてタクシーに乗るときの安全性は?

法律的にはOK。でも「安全」かどうかは、まったく別の話です。

事故が起きたとき、チャイルドシート未使用の乳幼児の致死率は、使用時の10倍以上になるというデータもあります。
それもそのはず。赤ちゃんは体が小さく、首や背骨も未発達。大人がシートベルトをしていても、抱っこでは赤ちゃんを守りきれないのです。

実際、僕が現役でタクシーを運転していたとき、
「子ども抱っこしててもベルトせんとアカンよな…でも後ろで抱いてるし、まぁ大丈夫か…」
そんな判断をする親御さんにたびたび出会いました。
でも、もし急ブレーキでも踏んだら…もし横からぶつけられたら…と、運転手側もヒヤヒヤなのが本音です。

では、チャイルドシートがないとき、せめてどんな工夫ができるか。
以下の3つは、最低限守ってほしい安全対策です。

  1. 抱っこひも(スリング)で赤ちゃんをしっかり固定
     →手で支えるだけでは衝撃に耐えられません。
  2. 大人が必ずシートベルトを着用
     →自分が吹き飛ばされれば赤ちゃんごと…という事態を防ぐ。
  3. 助手席ではなく、運転席の後ろに座る
     →事故時の被害を最小限にする位置とされています。

これらを守ったとしても、本当に安全と言い切ることはできません。
けれど、何もしないよりは遥かにいい。「親ができる最善」を尽くすことが、子どもの命を守る第一歩になります。

チャイルドシート付きタクシーという選択肢

「安全を考えればチャイルドシートがいい。でも持ち運ぶのは大変…」
そんな親御さんのために、今注目されているのがチャイルドシート付きの“子育てタクシー”です。

実は全国各地に、子育て中の家庭向けに特化したタクシーサービスが増えてきています。
運転手が子育て支援の講習を受けていたり、チャイルドシート・ジュニアシートを完備していたりと、まさに「親の味方」と言える存在です。

たとえば、以下のようなサービスがあります:

  • 東京・大阪:「東京子育てタクシー」「大阪子育て応援タクシー」
  • 名古屋:「なごや子育てタクシー」
  • その他の地域:全国子育てタクシー協会に加盟するタクシー会社多数

ただし、こういった車両は基本「完全予約制」です。
「今すぐ来て!」という通常の流しやアプリ呼び出しでは対応できないことがほとんど。
前日~数日前の予約が必要な場合もあるので、予定がわかっているなら早めの準備が肝心です。

また、追加料金がかかるケースもありますが、これは「安全のための投資」だと考えるべきでしょう。
数百円〜数千円で、子どもの命をより守れるのなら、それは決して高い出費ではありません。

「普通のタクシーと同じ料金でチャイルドシート付きが使えた」という口コミも多く、実は選び方次第
ネットで地域名+「子育てタクシー」で検索すれば、対応エリアの一覧がすぐに見つかるはずです。

現役運転手が語る「本音と現実」

タクシーに乗るお客様の中でも、「赤ちゃん連れ」は特別な存在です。
可愛いなあ…と思う反面、運転手側には常に「緊張感」が走ります。

たとえば、こんなケースがありました。
ある雨の日、20代のご夫婦と生後2ヶ月の赤ちゃんが乗車。「すみません、チャイルドシートないですよね…」と申し訳なさそうに言われたその瞬間、心の中で“覚悟スイッチ”が入るのを感じました。

急ハンドルも急ブレーキも、絶対にできない。
もしもの時、赤ちゃんに何かあったら…そんな想像をするだけで、普段の3倍くらい気を使ってハンドルを握っていたと思います。

実際、乗務員の中には「赤ちゃん連れは断る」という人もいます。
その背景には、「法律的にはOKでも、もし事故が起きたら…」という運転手なりの責任と恐れがあります。

僕自身、何度かそういう葛藤に向き合いました。
「万が一を想定して断るのが正しいのか」「でも、今この人たちは困っているんや」
運転席の中で、何度も自問自答しながら乗せたこともあります。

だからこそ、親御さんにも“他人任せにしない安全意識”を持ってほしいと思うんです。
運転手ができるのは、安全運転まで。でも、赤ちゃんを守る選択は、やっぱり親の手にゆだねられていると感じます。

まとめ|法律OKでも、安全は親が選ぶもの

法律上、タクシーに赤ちゃんをチャイルドシートなしで乗せることは違反ではありません
でも、それが本当に「安心」とは限らない。
タクシーは公共交通でありながら、車の事故リスクとは無縁ではないのです。

僕は運転手として、そして一人の親として、「法律よりも命を守る判断をしてほしい」と願っています。

たった5分の距離でも、「抱っこ紐+シートベルト」という一手間で、守れる命がある。
もし余裕があるなら、チャイルドシート付きタクシーを予約しておくのも手。
子どもにとって、たった一度の移動が一生の運命を左右する瞬間になるかもしれないのだから。

そして、親御さんが気を張るように、運転手もまた命を預かっている重みを感じていることも、少しだけ知っていてもらえたらうれしいです。

「大丈夫やろ」より、「備えてよかった」が、きっとあなたの安心になる。
そんな思いを込めて、今日もハンドルを握っている仲間たちがいます。

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