タクシー運転手──聞こえは気楽そうに思えるかもしれない。
「好きな時間に働ける」「一人の時間が多いから気楽」「歩合で稼げる」…そんな求人広告の言葉に惹かれ、僕は30代でこの世界に飛び込んだ。
ところが、初日の帰宅時には足が棒のようで、翌朝の目覚ましの音が恨めしかった。
仕事のきつさは、体だけじゃなく心にもじわじわと効いてくる。
今回は、タクシー運転手に転職した僕が肌で感じた“きつさ”と、それでも続けてきた理由──つまり、本当のメリット・デメリットを正直に話したい。
タクシー運転手が「きつい」と言われる主な理由
タクシーの運転席から見る景色は、毎日同じようでまったく違う。それが面白くもあり、きつくもある。
僕が最初に感じた“壁”は、勤務時間の長さだ。隔日勤務制の場合、朝から翌朝までの15〜18時間勤務が普通。休憩は取れるが、長時間ハンドルを握るだけで体は悲鳴を上げる。
さらに給料体系は歩合制が多く、「今日いくら稼げたか」が翌月の生活に直結する。繁華街での客待ちや流し営業は、まさに勝負の世界だ。
深夜帯は酔ったお客さんや、不機嫌な態度の人も多い。ときには無賃乗車やトラブルもある。安全確保とメンタルのコントロールは必須だ。
体の負担も大きい。長時間座りっぱなしは腰にくるし、目や肩も凝る。
そして、季節や景気によって乗客数が激変する。夏の猛暑日や真冬の雪の日は外出する人が減り、売上にも響く。
タクシー運転手に転職して感じたメリット
それでも、この仕事には続ける理由がある。
一つは、人間関係のストレスが少ないこと。前職のように上司や同僚と顔を突き合わせて働く必要がない。車内は自分の城だ。
次に、頑張り次第で収入を上げられること。雨の日やイベント時、深夜帯はチャンスだ。僕も月によっては手取り40万円近く稼げた時期があった。
また、学歴や職歴のハードルが低く、普通二種免許さえあれば挑戦できる。会社によっては免許取得費用を負担してくれるところもある。
さらに、50代や60代から未経験で始められる数少ない職種だ。土地勘や会話力が自然と身につくのも大きな財産になる。
タクシー運転手に転職して感じたデメリット
一方で、この仕事は心身の負担が重い。
勤務が不規則になり、睡眠リズムは乱れがち。休日の感覚も前職とはまるで違う。
孤独感もある。誰とも話さずに一日が終わることもあるし、逆に嫌な客とのやり取りが頭から離れない夜もある。
収入の波も覚悟が必要だ。月によっては生活費ギリギリの時もあり、「来月は大丈夫か」と不安になる。
そして、事故や違反のリスクは常に隣り合わせ。たった一度のミスが生活を一変させる可能性がある。
きつさを乗り越えるための工夫
僕なりの対策もある。
まず、休憩はこまめに取る。コンビニの駐車場や公園のベンチで軽くストレッチをするだけでも全然違う。
稼ぎやすい時間帯やエリアを研究し、自分なりの“稼ぎパターン”を作る。
深夜帯は安全確保を最優先にし、危険そうなお客さんは丁寧に断る勇気を持つ。
そして、会社選びは歩合率だけでなく、事故対応や研修制度などのサポート体制も重視する。
これからタクシー運転手へ転職を考える人へ
「きつい」という声は、確かに嘘じゃない。でも、それは裏返せば、やりがいと直結している部分でもある。
向き・不向きは人によって違う。もし迷っているなら、まずは体験乗務や面接で現場の空気を感じてほしい。
あなたが握るハンドルが、ただの生活のためじゃなく、誰かの一日を支える道具になるかもしれない。
まとめ
タクシー運転手はきつい。けれど、それ以上に人間らしい仕事だ。
転職を考えるなら、光と影の両方を受け止める覚悟を持ってほしい。
ハンドルの向こうには、今日もいろんな人生が乗ってくる。
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