バス運転手の中休勤務はキツい?それとも天国?その理由について紹介

仕事・勤務形態・リアルな日常

「昼の4時間、まるまる自由時間?」「そんな働き方あるの?」──これ、バス運転手の世界ではよくある勤務形態のひとつ、“中休勤務”の話です。

勤務の途中に長めの休憩が挟まる中休勤務。一般的なオフィスワークとはちょっと違ったリズムで、時には天国のようにのんびり、時には地獄のようにしんどい…。そんな不思議な働き方に、今回はスポットを当ててみます。

7年間の運転手経験を持つ筆者が、自分の体験と現場の声をもとに、「バス運転手の中休勤務はキツい?それとも天国?」という疑問に、じっくりお答えします。

中休勤務(なかやすみきんむ)とは、その名の通り「勤務の途中に長時間の休憩が挟まる」勤務スタイルのこと。特に路線バスの運転手に多く見られる勤務形態で、早朝に出勤し、午前中に何本かの便を担当した後、昼過ぎから夕方にかけて数時間の休憩。そして夕方から夜にかけて再び運転業務が始まります。

例えば、こんな一日の流れが典型的です。

  • 6:30 出勤・点呼
  • 7:00〜11:00 運転業務(朝のラッシュ対応)
  • 11:00〜15:00 中休(自宅や仮眠室で休憩)
  • 15:00〜19:00 運転業務(帰宅ラッシュ対応)
  • 19:30 退勤

このように、中休勤務は「朝と夕方のピーク時間だけ運転し、真昼の時間帯はガッツリ休む」ような働き方。会社によっては“中割勤務”や“中抜け勤務”と呼ぶこともあります。

見た目はラクそうに見えますが、じつはこの勤務には“独特のキツさ”と“魅力的な自由さ”が同居しているんです。

一見、昼に長く休めるからラクそう…と思われがちな中休勤務。でも、実際にやってみると「これはキツいわ…」と感じる場面も少なくありません。以下に、筆者や同僚たちが感じた“中休のしんどさ”を紹介します。

① 生活リズムが乱れやすい

早朝に出勤し、昼に中途半端な仮眠をとって、また夕方に働く──。このサイクルは、体内時計にかなりの負担をかけます。夜勤ほどではないにせよ、睡眠の質が浅くなったり、夕方の業務がダルく感じたりするのはよくある話です。

② “4時間の休憩”が逆に疲れる

休憩が長すぎて、体も気持ちも一度オフモードになってしまう。結果、夕方の乗務に入るとき「うわ…もう一回やるのか…」という倦怠感に襲われるんです。しかも、昼寝しすぎて逆に頭がぼーっとする、なんてことも。

③ 家に帰れるけど、何もできない

勤務先が近ければ中休に自宅へ戻ることもできますが、実際は「ただ帰って寝るだけ」。買い物や家事など、まとまった行動をするには微妙に時間が足りない。そのくせ、職場には“半分勤務中”という意識があるので、完全にオフにはなれません。

④ 家族との時間がずれる

昼間に休みがあっても、家族は仕事や学校でいないことが多い。朝と夜の勤務に挟まれているせいで、家族と一緒にご飯を食べたり、出かけたりする時間も限られます。特に子育て世代の運転手からは「中休勤務が一番しんどい」という声も。

中休勤務にはキツさもあるけれど、決してネガティブな面ばかりではありません。実際に働いてみると「これは他の仕事にはない魅力やな」と感じることも多々ありました。ここでは、その“意外なメリット”を紹介します。

① 平日の昼間を自由に使える

中休の魅力はなんといっても、平日のど真ん中に自由な時間があること。病院や役所など、普通なら混雑する時間帯にスムーズに行ける。人混みの少ないカフェでゆっくり読書したり、趣味の時間にあてたり…使い方次第で人生が豊かになります。

② 仮眠や仮宿でしっかり休める

多くの営業所には「仮眠室」や「休憩所」が用意されていて、簡易ベッドやリクライニングチェア、テレビや電子レンジまで完備されています。静かな空間で昼寝ができるのは、長距離ドライバーにはない大きな利点です。

③ 通勤ラッシュを避けられる

中休勤務は早朝と夕方に動くため、ちょうど“会社員のピーク時間”を外して通勤できます。朝も5〜6時台の電車や車で移動することが多く、混雑にイライラすることが少ないのは精神的にかなりラクです。

④ 同僚と“深い関係”になれる

中休中は職場の休憩室で他の運転手と一緒になることも多く、そこで何気ない会話が生まれます。「昨日、○○線でやばい客乗ってさ」「あの信号、タイミング最悪よな」といった“運転手あるある”を共有することで、いつの間にか絆が深まるんです。

中休勤務は、合う人にはすごく快適。でも、体質やライフスタイルによっては「まったく合わない…」と感じることもあります。ここでは、元バス運転手の目線で「どんな人に向いているか/向いていないか」を整理してみました。

◎ 中休勤務が向いている人

  • 一人の時間が好きな人:中休の数時間をどう過ごすかは完全に自由。読書、散歩、昼寝…“ひとり時間”を楽しめる人は大きなメリットになります。
  • 柔軟な生活リズムに対応できる人:日によって勤務時間が変動したり、昼夜の切り替えがあるため、体調管理がうまい人は中休勤務と相性◎。
  • 時間の有効活用が得意な人:4時間をダラダラ過ごすか、有意義に使うかで一日の充実度が変わります。副業や勉強にあてる人もいます。

× 中休勤務が向いていない人

  • 夜に弱い人:中休の後は夕方〜夜にかけての勤務が基本。日が沈むと集中力が落ちる人にとっては、ここがしんどいポイント。
  • 家庭との時間を重視したい人:特に子育て世代は、朝も夜も勤務にあたると家族との時間がズレやすい。夕食を一緒に食べられないなど、生活のすれ違いが起きやすいです。
  • 睡眠の質にこだわる人:昼に寝る→夜にまた働く、というサイクルは、人によっては睡眠障害や慢性的な疲れにつながります。

結局のところ、“中休勤務が合うかどうか”は、仕事観・生活観・体質の3つにかかっているのかもしれません。

「中休勤務ってラクそうやな」──たしかに、平日の昼にがっつり休める勤務形態は、他の職業にはなかなかありません。ですが、実際に現場で経験してみると、その裏には想像以上のしんどさや生活リズムの難しさがあることに気づきます。

一方で、中休の時間をうまく使える人にとっては、これほど自由でありがたい働き方もありません。仮眠、読書、役所に行く、誰もいない街を散歩する…その自由は、ちょっとした特権にも思えるほどです。

バス運転手という仕事は、ただハンドルを握っているだけじゃない。“中休”という働き方一つとっても、その人の価値観や生活スタイルが色濃く出るのです。

この記事が、「中休勤務って実際どうなん?」と気になっている方にとって、少しでもリアルな判断材料になれば幸いです。

そして、もしあなたの街で、昼と夕方の路線バスを走らせている運転手さんがいたら。きっとその人は、ほんの数時間前にラーメンをすすって昼寝をして、また運転席に戻ってきたばかりかもしれません。

それでも、安全に、確実に、今日もバスを走らせている。──中休勤務という“裏側”を知った今、その背中が少しだけ違って見えたら、それだけで書いた意味があります。

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